珪藻土とは
珪藻土は、太古の海に生息した藻類の一種である「珪藻(約数10μmの大きさの単細胞植物)」が死んで堆積し、化石化して岩石となったものです。
ダイアトマイト(diatomite)ともいいます。
水底に沈殿した死骸の中の有機物の部分は、少しずつ分解されていき、最終的には二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とした「殻」の部分だけが残ります。
長い年月を掛けてこの珪藻の殻が化石化し、岩石となったものを珪藻土と呼びます。
古くから炭火を入れて使う七輪として、家の土壁の材料として、また漆器で有名な輪島塗の下塗材としても使われています。
ナノメーター(100万分の1mm)単位の孔が無数に並ぶ超多孔質構造を有するこの土は「調湿性」(吸湿と放湿により湿度を一定に保つ)という最大の特性と共に「脱臭性・耐火性」等様々な効果を発揮します。
七輪との関係で言えば、珪藻土は熱せられると蓄熱し遠赤外線を出し、高い熱効率と焼き物における美味しさを生み出します。
熟練職人の手によって切り出される「天然珪藻土岩」
切出し七輪の材料となる珪藻土岩は、坑口より400メートル程入った地下約30メートルの採掘場から切り出します。
平ノミで平らに均した岩盤に、切り出す大きさに切込線を入れ、その切りしろに鉄砲ノミを差し込んで削っていきます。
最後にクサビを入れ、槌で叩き、順番にブロックを取り出します。
時に岩盤に筋や亀裂が入っていることもあり、天然の土が相手のこの切り出しは、土を知り尽くした職人の技でなければ難しい作業です。
彫刻のように彫り上げるこだわり
切り出された珪藻土のブロックは、成型に入ります。
電動ノミ等で風口やくり抜きをする以外は、全て手掘りによって成型していきます。
ここでも亀裂がある場合、作業中に割れてしまうこともあるので、やはり慎重に人の手で彫り上げていかなければなりません。
まるで彫刻家のような職人たちの手によって珪藻土岩は、七輪へと生まれ変わっていきます。
「火」と語り合う時間(とき)
手彫りで成形した後は、一つ一つ慎重に窯詰めをし、無事に焼き上がる事を祈りながら窯の口を閉じます。
そしてここから約800度で約45時間の焼成に入ります。
見えない窯の中の様子を火と語り合うことで感じ取り、昼夜をいとわず1時間毎に薪入れをし焼いていきます。
その後、15時間ほど冷ましてからようやく窯出しをします。
全ての職人の思いを形に
焼成後は仕上げ作業にはいります。
仕上げはこれまでの全ての職人の思いを一つの形にまとめるとても大切な作業です。
一つ一つに丁寧に磨きをかけ塗料を塗り、仕上げに金具を取り付け、ようやく「切り出し七輪」は完成をむかえます。
丹精込めて仕上げる手づくりの逸品
すべての工程をほぼ人の手によって行うこの「切り出し七輪」には、一つ一つに職人たちの思いが込められています。
もはや「芸術品」と言っても過言ではない逸品です。
七輪の製法による違い
七輪の製法は「練り物」製法と「切り出し」製法に大別することができます。
「練り物」製法は珪藻土(けいそうど)を砕き粉末にして練り、型に流し込み成形する製法です。
大量生産がきくために安価に作ることができますが、七輪が重くなり、劣化が進むと外側からポロポロと崩れてきます。
一方「切り出し」製法は、地中から採掘した珪藻土ブロックから専用のノミで一品々々切り出し、さらに2昼夜薪窯で焼く製法です。
天然の珪藻土を活かした製法のため、熱効率が非常に高く丈夫で思いのほか軽いのが特長です。